都内で有名な欧風カレー店がある。その暖簾分けをしたお店がスキマバイトの募集をしていたので働くことに。お店に到着すると、とても素敵な奥様が出迎えてくれた。店内はこじんまりとしているものの、なんだかいい感じの雰囲気。その奥様は、知り合いの亀戸アートセンターのチャッピーさんに似ていた。チャッピーさんといえば、どんな人でも優しく接する方だ。きっと奥様も、同じように優しい方なのだろう。

このカレー屋は人気店のためデリバリーも多く、イートインの注文をとりながらお弁当の包装もする。これが慣れていないと大変で、焦らずじっくりやることに集中した。伝票の書き方は、野菜カレーは「ヤ」、ポークカレーは「ポ」など頭文字を書く。伝票を手書きする店が減っているので、懐かしかった。

オープン時から家族連れやカップルで来られる方が多く、店内は常に満席。いかにお客さんを回転させるかが大事で、慣れないところは固定スタッフの方にお願いする。仲の良いご夫婦が営む店は雰囲気がよく、まかない飯もいただくことができた。

欧風カレーのまかないにはご飯の上にチーズがかかっていて、ふかしたじゃがいもと小さい梅干し、きゅうりの漬物が添えられていた。

「まかないいただきます」
「どうぞ」

まかない飯をいただくときには、作ってくれた方へ感謝を込めて必ず言うようにしている。

次のスキマバイトが入っているので、さくっと食べる。お店で食べると2000円前後するのでなかなか自分の懐では行く機会はないけれど、まかない飯で食べられるのは嬉しい。忙しいお店なのに提供してくれたことにも感謝。

再度募集が入ったときも応募することに。2回目の出勤は5カ月ぶりだったが、奥様は名前も顔も一度しか働いていないのに、ぼくのことをよく覚えてくれていた。しかしその日はどういうわけか、厨房に立つ旦那さんが奥さんへの当たりが厳しかった。夫婦で店をやっているからこその光景かと思いながら、どこか微笑ましさも感じつつ静かに見守った。

その日も常に満席であったが、1回目に働いたときよりは早く動けるようになった気がする。気に入ったお店は1回だけではなく、タイミングがあれば入るようにしている。そこで出会った人にもう一度会いたい──そんな気持ちも、スキマバイトで見つける楽しみのひとつだ。

浅草橋洸彦

浅草橋洸彦

クリエイティブ労働者

有限会社アシダ企画代表取締役社長。天才百貨点主催。ぷりぷりから星葡萄を経て、現在は「下町のぷりンス」として君臨する。
1984年生まれ、育ち共にお江戸東京日本橋で産湯を浸かり、浅草橋で独立、家督を継ぐ。絵本作家、文筆業、出版事業他、喫茶評論、銭湯評論、鉄道評論、競輪評論、スナック・定食屋・食堂レポーター、レコードプロデューサー、他・他・他・他芸術家達の人間交差点としてマルチに活動し、前衛生活芸術没頭中。