バイトのぷりンス

居酒屋チェーン店の生姜焼き【14 】

浅草橋洸彦

2023年の年末。うっ血性心不全で約1か月入院した。高血圧が原因で、不摂生な食生活がそれを招いてしまった。九死に一生の体験をした退院後、しばらく体力づくりでUber Eats(ウーバーイーツ)のデリバリーをやっていた。

退院後、少しずつ体力が戻ってきた頃に働いたのは、居酒屋チェーン店のランチ営業だった。以来、今でも募集が出ると店員さんに会いたくてスキマバイトをすることがある。

入った初日のことをよく覚えている。退院後でまだ万全な状態ではなかったが、できる限りやらせてほしいと伝えると、店長がやさしく迎えてくれた。ほかのスタッフも年配の方が多く、皆おだやかでやさしかった。チェーン店でも店長によって環境が変わるのだと、身をもって体験した。何度か通っているが、スタッフが変わらないというのは、環境が良い証なのだと思う。

まかない飯は選べるのだが、毎回生姜焼き定食を頼んでいる。生姜焼きとキャベツの間に添えられているマヨネーズに七味唐辛子を入れて食べるのが好きだ。肉の中では、赤身やひき肉、豚肉が好き。生姜焼きが抜群に美味いというわけではないのだが、それでも毎回つい頼んでしまうほど好きな料理。
スキマでバイトに入るたび、スタッフの方がきちんと感謝の言葉をかけてくれるし、厨房の人たちも仲が良さそうで、変なストレスがかかっていないのもまたいい。

大手のチェーン店で「いいな」と思える現場に出会えるのは、1000件以上回っても数えるほどしかない。人を見下さず、同じ土俵で協力し合う現場であること。国籍関係なく、面倒を見るところ。初めてスキマバイトで入っても、派遣社員かどうかに関係なく接してくれるところ。そうした点を、働く場所を判断するひとつの基準として、ぼくは見ている。

生活のためのお金ももちろんだけど、働く人間関係のストレスのほうが身体にくるので、ぼくのような繊細な人間は人間関係に深く入らない方が気楽で、何かをつかみ取る感覚を守るために、気を付けている掟だ。

浅草橋洸彦

浅草橋洸彦

クリエイティブ労働者

有限会社アシダ企画代表取締役社長。天才百貨点主催。ぷりぷりから星葡萄を経て、現在は「下町のぷりンス」として君臨する。
1984年生まれ、育ち共にお江戸東京日本橋で産湯を浸かり、浅草橋で独立、家督を継ぐ。絵本作家、文筆業、出版事業他、喫茶評論、銭湯評論、鉄道評論、競輪評論、スナック・定食屋・食堂レポーター、レコードプロデューサー、他・他・他・他芸術家達の人間交差点としてマルチに活動し、前衛生活芸術没頭中。