バイトのぷりンス

なんちゃってチキン南蛮【10】

浅草橋洸彦

コロナ禍で緊急事態宣言が出され、街の飲食店は一斉に営業時間の短縮を余儀なくされた。多くの飲食店の人たちが工夫を凝らし、夜営業ができないお店のなかにはランチ弁当をはじめることもあった。普段はなかなか足を運ぶことのできない高級料理店も、破格の値段で弁当を提供していた。ぼくはさまざまな店の弁当ランチを巡ることにした。猪料理の専門店では猪弁当が1000円でテイクアウトでき、老舗の焼き鳥屋ではワンコインの500円弁当が販売されていた。

神楽坂の普段なかなか足を運ぶことのできないフランス料理店の弁当も食べてみたが、味付けや不慣れであろう弁当の梱包にがっかりすることもあった。それでも、個人店も含めてさまざまなお店が実験的に試行錯誤する現場を目にできたのは、貴重な体験だった。

そうした試行錯誤は街のあちこちで見られた。イートイン営業ができない居酒屋が、Uber Eatsで複数ブランドを展開するフードデリバリー専用店舗として急増した。たとえば「ネギトロ専門店あけみ」や「牛丼かつ丼のてる」は別々のお店のように見えるが、実際には同じ場所の店舗が作っているのだ。注文するお客さんは店名とメニューしか見ていないため、同じ店舗が作っていることに気づかないだろう。

そのような店舗で調理を手伝ってわかったことは、ハンバーグやカキフライなどに完成度の高い冷凍食品や業務用の食材が使われていることで、いかに進化しているのかを実感した。ただし、味や食感が安定している分、お店独自の味わいが少なく、食べると感覚が鈍る印象がある。

なかでも、どの店でも手作りだと感じたのが唐揚げだった。業務用フライヤーを使ってはいるものの、味付けは店ごとに工夫されており、手作りの味を楽しめる。

そういったお店のスキマバイトで、試食として唐揚げを食べたことがある。余ったタルタルソースを唐揚げの上にかけた、なんちゃってチキン南蛮だ。揚げたて熱々で、タルタルソースの白身が入っていて美味しかった。自分でタルタルソースを作りながら、梅としそ、醤油を混ぜたソースもいいなと料理への創作意欲が湧いてきた。

もしチェーン店の居酒屋でお昼ご飯を食べるなら、唐揚げ定食を頼むのがおすすめだ。カニクリームコロッケなどの揚げ物は、食べていると舌触りなどから業務用であることがわかってしまう。しかし唐揚げは違う。味付けや揚げ方、油の使い方などで、それぞれの味の違いが感じられるのだ。

浅草橋洸彦

浅草橋洸彦

クリエイティブ労働者

有限会社アシダ企画代表取締役社長。天才百貨点主催。ぷりぷりから星葡萄を経て、現在は「下町のぷりンス」として君臨する。
1984年生まれ、育ち共にお江戸東京日本橋で産湯を浸かり、浅草橋で独立、家督を継ぐ。絵本作家、文筆業、出版事業他、喫茶評論、銭湯評論、鉄道評論、競輪評論、スナック・定食屋・食堂レポーター、レコードプロデューサー、他・他・他・他芸術家達の人間交差点としてマルチに活動し、前衛生活芸術没頭中。