バイトのぷりンス

賄いなしのはずが、鮭のムニエル【13】

浅草橋洸彦

直前になってスキマバイトに応募することがある。一度入院を経験して以降、仕事の仕方が変わった。休みたいときに休む。だから決まった日程でスケジュール通りに進行する仕事は苦手だ。スケジュールを組むことは得意だし、知り合いから頼まれた仕事は、時間通りにこなすことが多い。

その日は、別件で制作しているCDの営業があり、その交通費を稼ぐために気になっていたお店に応募した。そこは高層ビル内のレストランフロアにあり、イタリアンを中心にしながら、お惣菜をテイクアウトできるお店だった。ランチ時はOLやサラリーマンで賑わい、ピークを過ぎた14時以降は半額になる。高層ビル内にあるレストランの弁当は、この時間帯が狙い目だ。

主な業務は洗い場のほか、お惣菜の盛り付け。まさか二刀流の作業を同時にこなすとは思っていなかったが、まずは弁当箱に日替わりの惣菜を盛り付けていく。

その日のメインはチキンのローストだった。サラダの上にチキンを添えて、横にごはんを詰める。上半分は2種類のお惣菜が入る仕様になっている。

お客さんが好きなものを2種類選ぶ。どれも手作りヘルシーで美味しそう。価格は1000円するが、これはOLやサラリーマンを中心に人気があるのもうなずける。

お店のLINEアカウントに登録すると、スープやドリンクも無料で付く。ピーク時の12時30分まではお弁当の盛り付けを担当し、その後は洗い場へ回る。レストランのほうはバイキング形式なので、皿が大量に運ばれてくる。イタリアンやフレンチの場合、業務用洗浄機にかけた後、さらに拭く作業がある。しかしこちらのお店はシルバー以外ないので、その分とても助かる。さすがに慣れているので、配置を細かく聞かなくても何となくどこに収納すればいいか勘が働く。

3時間あっという間に過ぎ、帰宅する直前に女性のスタッフの方から、

「まかないがありますが、食べていきますか?」

と声をかけられた。募集要項にはまかない飯の記載はなかったので、これはうれしい。仕事を終えて待っていると、通常のランチ以上に豪華なメニューが運ばれてきた。サラダやナスをバルコミコ酢でつけたものが添えられ、メインの鮭のムニエルはボリュームあり、働いた以上のご褒美をもらったかのようだ。

まかない飯がどれほど労働者にとって、お金以上の価値があるのか。そこに、お店の姿勢が垣間見れるのもまたいい。またタイミングが合えば、働こうかな。

浅草橋洸彦

浅草橋洸彦

クリエイティブ労働者

有限会社アシダ企画代表取締役社長。天才百貨点主催。ぷりぷりから星葡萄を経て、現在は「下町のぷりンス」として君臨する。
1984年生まれ、育ち共にお江戸東京日本橋で産湯を浸かり、浅草橋で独立、家督を継ぐ。絵本作家、文筆業、出版事業他、喫茶評論、銭湯評論、鉄道評論、競輪評論、スナック・定食屋・食堂レポーター、レコードプロデューサー、他・他・他・他芸術家達の人間交差点としてマルチに活動し、前衛生活芸術没頭中。