バイトのぷりンス

卵入りのもつ煮込み【22】

浅草橋洸彦

スキマバイトのアプリを何気なく覗いていると、突然馴染みのあるお店の名前がでてきた。思わず応募してみると、すぐにマッチングが決まった。その店は飲みに行く前によく立ち寄る場所で、オープンの頃から通っている。店長はアルバイトで入った頃からお店を任されるようになるまでを見てきたので、なんだかうれしい気分だ。

次の日、ぼくのLINEにその店長から連絡が入った。

「もしかして間違えたら申し訳ないですが、〇月〇日応募しましたか?」

応募したことを伝えると、

「冗談かと思ったけど、まさか本当に募集していてびっくりしたよ。よろしくね!」

というやりとりをした。その次の日もLINEが届き、

「スキマバイトを使うのが初めてで手数料もかかるので、一度こちらでキャンセルして、お店の方で単発として入ってもらう形にしますね」

という連絡が。顔なじみでもあるし事情もわかるので了承した。その後、もう一通。

「実は社長には今回スキマバイト使ったこと、内緒にしてほしくて。僕から誘われたということにさせてください。その日私はお休みで、社長と入ることになりますが、大丈夫ですか?」

なんでスキマバイト使ったんだよ(笑)、と心の中で突っ込みつつも、面白い流れなのでそれも含めて引き受けることにした。まだ若い彼なりに、人の集め方に悩んでいるのだろう。彼の活動も応援したいし、せっかくだからひと肌脱ぐことにした。

本番の日。知っているお店とはいえ、顔なじみだからこそ少し緊張する。社長はやさしく迎えてくれて、手が空けば掃除をしたり、ドリンク作ったり。細やかなやり取りを重ねながら、お客さんとの時間を大事にしているお店だとあらためて感じる。

途中にまかないをいただくことになった。今後メニューに加わる予定の刺身の試食に、卵入りのもつ煮込み、しらすと明太子のおにぎり。どれも温かくて、ほくほくしている。もつは臭みがなく、どろっとした好みの仕上がりでとても美味しかった。

仕事終わりには近くの知り合いの店に顔を出してから、また戻って一杯。今夜はこの街をしっかり楽しもうと思う。タイミングが合えば、また人手が足りないときに手伝えたらいいなと思った。

浅草橋洸彦

浅草橋洸彦

クリエイティブ労働者

有限会社アシダ企画代表取締役社長。天才百貨点主催。ぷりぷりから星葡萄を経て、現在は「下町のぷりンス」として君臨する。
1984年生まれ、育ち共にお江戸東京日本橋で産湯を浸かり、浅草橋で独立、家督を継ぐ。絵本作家、文筆業、出版事業他、喫茶評論、銭湯評論、鉄道評論、競輪評論、スナック・定食屋・食堂レポーター、レコードプロデューサー、他・他・他・他芸術家達の人間交差点としてマルチに活動し、前衛生活芸術没頭中。