バイトのぷりンス

手で食べるミールス【19】

浅草橋洸彦

ぼくの行きつけのお店のひとつに、神田TETOKA(手と花)というカフェとギャラリーを併設したオルタナティブスペースがある。近所の人から作家までさまざまな人が集うこの場所で、ある展覧会が行われた。

展示をしていた作家さんの知り合いがカレーを提供していた。偶然にもそこに訪れたお客さんが、数年前に閉店してしまった東京駅近くにあった南インド料理店の料理長だった。カレーを提供した方は南インド料理店で働いていたが、その後独立し、現在は久我山で南インド料理のお店をやっている。

展覧会でフードがあるたびに元料理長がTETOKAを訪ねて、ラム肉のカレーを試食させていただいたのが、素敵な思い出になっている。

そんな元料理長が新たに都内でお店を開き、偶然にもスキマバイトでマッチングすることになった。お店に到着すると、開口一番に「あ!葡萄先生が働きに来たー」と絵本作家としての名前で呼ばれた。

お店のメニューはベジタリアン対応になっていて、平日ランチメニューには、日替わりカレー1種、または3種。バトゥーラという揚げパンや、プレーンドーサというコメと豆から作る生地だけのシンプルなクレープも含まれ、ランチミールス、マサラドーサランチもある。ごはん大盛、おかわり無料。

夜のメニューはさらにランチでは味わえないコース料理もあるので、いろんな料理が食べたい方は夜がおすすめ。私のお勧めは、マトン。

仕事は洗い場を担当した。人気店ランチタイムはとくに忙しく、3回転ほどこなした。銀色のカレー皿を洗ったり、忙しいときは下げ残されたお皿を片付けたりしてサポートした。スタッフの人はとてもやさしくて、時間があっという間に過ぎていく。

14:00にラストオーダーがあり、その後お客さんがいなくなったタイミングでまかないでカレーをたくさんごちそうになった。銀色の皿の上にバナナリーフが敷かれ、その上にチキンカレーとラム肉のカレー、サンバル、ラッサムスープ、さらにサービスのエビのカレーをいただく。料理長がつくるラム肉のカレーがとても美味しく、みんなでわいわい会話しながら食べた。

料理長から、カレーは手で掴みながら食べるといいよと教えてもらった。お店ではスプーンやフォークなどが用意されているが、本当は手で食べることがおすすめとのこと。右手を使ってカレーとご飯を馴染ませると、味が立体的になるそうだ。箸やスプーンを持つことが当たり前になっているので、意識を変えて試してみるのは楽しいし、食の世界が広がる。

よいお店というのは、空間の心地よさだけでなく、そこで働くスタッフとの関係も含めて成り立っている気がする。お互いに居心地がよく、できる限り長く続く信頼関係があることが大切だと思う。働けて良かった現場で、お客さんとしてランチで足を運びたい場所。

浅草橋洸彦

浅草橋洸彦

クリエイティブ労働者

有限会社アシダ企画代表取締役社長。天才百貨点主催。ぷりぷりから星葡萄を経て、現在は「下町のぷりンス」として君臨する。
1984年生まれ、育ち共にお江戸東京日本橋で産湯を浸かり、浅草橋で独立、家督を継ぐ。絵本作家、文筆業、出版事業他、喫茶評論、銭湯評論、鉄道評論、競輪評論、スナック・定食屋・食堂レポーター、レコードプロデューサー、他・他・他・他芸術家達の人間交差点としてマルチに活動し、前衛生活芸術没頭中。