バイトのぷりンス

ニキビ治療モニター【26】

浅草橋洸彦

自分のお店をはじめたころ、売上だけでは生活が厳しかった。お店を一緒に切り盛りしていた占い師のパウロ野中氏と営業後に働ける仕事を探していたとき、ふと気になる広告を見つけた。

ニキビモニター募集。報酬は、1回目5,000円、2回目5,000円、3回目は3万円。所要時間は30分ほどで、結構割のいい条件だ。ニキビのある人はいくらでもいそうだが、気軽に参加できそうだし、化粧品のモニターという点にも興味があった。そこで、2人で応募してみることにした。

指定された場所は横浜あたりで、その建物はどこかファンシーだった。病院というより美容クリニックのような雰囲気で、妙に落ち着かない。黒服の人たちが列に並んでいるのはなぜだろうか? 突っ込みたい欲求を抑えて診療室に入ると、近所のスーパーで見かけるような佇まいのおばさま先生が開口一番、

「あらー、あなたニキビたくさんあるわね。」

さらに、「目に見えない内側にも30個以上あるわよ」と断言された。相方のパウロ氏も肌がきれいなのに、「あなたもニキビ20個以上あるわよ」と言われている。これは誰が来てもそう言われる仕組みなのではないか、と思いながらも、とにかく言われるがままに診察は進んでいった。

診察は10分ほどで終わり、AとBの2種類の化粧水をもらい、右の肌にはA、左の肌にはBをつけて検証するモニターだった。これで肌がつやつやになって、急にモテるのかな?という妄想を膨らませながら、試した。2回目に訪れると、他のモニターの中に初回はかなりニキビがひどかった人がいて、その人の肌には明らかな変化が出ていた。

ぼくも変わってないと思いきや、先生に「あなたもニキビが少なくなっているよ」と言われた。パウロ氏も私と同じことを言われていたが、彼の場合はまったく使っていなかった。それでも効果が出ていると言われると、先生が適当なのか、マジなのかわからなくなった。

3回目の診察に行くと、先生は「これでニキビも少なくなったね」と私とパウロ氏にそれぞれまったく同じことを言った。そして、そのまま報酬を受け取って終了となった。帰りに近くの中華料理屋でご飯を食べながら、「これでお金もらっていいのか」と2人で爆笑した。またあったらやりたいが、なかなか出てこないんですよね。

浅草橋洸彦

浅草橋洸彦

クリエイティブ労働者

有限会社アシダ企画代表取締役社長。天才百貨点主催。ぷりぷりから星葡萄を経て、現在は「下町のぷりンス」として君臨する。
1984年生まれ、育ち共にお江戸東京日本橋で産湯を浸かり、浅草橋で独立、家督を継ぐ。絵本作家、文筆業、出版事業他、喫茶評論、銭湯評論、鉄道評論、競輪評論、スナック・定食屋・食堂レポーター、レコードプロデューサー、他・他・他・他芸術家達の人間交差点としてマルチに活動し、前衛生活芸術没頭中。