NeWORLD インタビュー

カラフルでユーモラスな世界へ飛び込もう! イラストレーター・山崎若菜interview

NeWORLD 編集部

個性豊かなキャラクターたちをポップな色彩で描く、イラストレーターの山崎若菜さん。2019年に中空工房から発売されたソフビ、「ドラゴンと魔法使い」は大好評を博し、今年6月にはカプセルトイにもなりました。今回は開発中の新作ソフビ3点と、意外にもVINYLでは初開催となる個展についてお話をうかがいました!

15年間変わらない制作スタイル

――VINIYLでの個展は今回が初めてなんですね。

実はそうなんです。ずっとお声がけいただいていたのですが、なかなか都合が合わなくて。もちろんVINIYLで個展をやりたい気持ちはあったので、今回は満を持しての開催です。展示に合わせて、可愛いグッズもたくさん準備しました!

――今回の展示「SIDE QUEST」のコンセプトについて教えてください。

今年新しくリリースされる3つのソフビのうち2つは、「ドラゴンと魔法使い」と同じ世界観のキャラクターなので、その世界観を広げるような展示がしたいと考えています。ソフビを踏まえた、キャラクターたちがメインの展示になりそうです。

――作品はどのように制作されているのですか?

まずボールペンで線画を描いて、それをスキャンしてフォトショップで色をつけています。ボールペンも特別なものではなくて、普通に売っている0.38mmのボールペンです。

▲スキャン前の線画。奥には大量のボールペンストック

――線画はボールペンで描かれているんですね。

ポールペンで線画を描くのは、イラストレーターを始めた時からずっとですね。2009年頃に初めてのお仕事をいただいたので、活動を始めて15年ほどになるのですが制作のスタイルは変わっていません。

――15年間も同じスタイルで描き続けられるのはすごいことですね。

スタイルもですが、作風もほとんど変わっていません。多分、自分にすごく合っているんだと思います。デジタルで色付けをしているので、展示する作品はプリントのものが多いのですが、私はむしろそっちの方が好きなんです。手描きだと味わいが出すぎてしまう感じがして……。作品から制作の苦労や困難が読み取れてしまうと、自分自身が引いてしまうので、頑張って描いた痕跡を薄めてくれるプリントの方が私にはしっくりきます。

――普段の制作で心がけていることやこだわっていることはありますか?

なるべく「わかりやすい絵」を心がけています。好き勝手に描いた結果、マニアックな絵になりすぎてしまって理解されない、という下積み時代の経験から、見る人が一瞬でわかるということは意識しています。間口が広いイメージというか。あとは誰かを傷つけないことですね。絵を見た人にはハッピーな気持ちになって欲しいので!

――今の作品につながるもので、影響を受けたものはありますか?

昔からおもちゃが好きで、アメリカの80〜90年代のフィギュアを集めたりしているので、影響は受けていると思います。あとは海外のアニメーションとか、B級映画、海外ドラマとか。海外ドラマは子供の頃から大好きだったので、特に影響は大きいかもしれません。

長年集めているというおもちゃコレクション

――おもちゃ好きとのことですが、ソフビにも元々興味をお持ちだったのですか?

はい。元々好きだったので、ソフビのお話が来た時も「やりたい!!」って感じで即答でした。

――ソフビ「ドラゴンと魔法使い」は、中空工房のソフビシリーズ・VINYLSの第1 弾として発売されたんですよね。

そうなんです。初めの立ち上げから一緒にやっていましたが、正直こんなに人気になるとは想像もしていなかったので驚いています。でもソフビそのものも、カラーを考えたりするのも好きなので、楽しみながら制作できています。

――ワンオフ(一点もの)の塗装、本当に素晴らしいですよね。

あれはエアブラシで塗っているんですが、それ専用の塗装部屋を作ったんです。ちゃんとした塗装ブースと、エアブラシと、ハンドペイントとかを5、6種類くらい買って。マスキングをオリジナルで作れるように、マスキング用のカッターも自腹で購入しました。うちの塗装室の設備はかなり整っていると思います。

▲塗装部屋の様子。この写真だけでも、かなり設備が整っていることがわかる

――それはもうワンオフのためだけに?

そうですね。やるからにはとことんこだわりたいなと思って。塗装も独学ですが、初めての作品もかなり評判が良かったし、何より私が楽しい。でもなかなかやる機会がないのが残念です。

▲Taipei toy Festivalに出展された、「ドラゴンと魔法使い」のワンオフ作品

――独学とは思えないクオリティ……驚きです。

昔、携帯のデコレーションにすごくハマって、ラインストーンでなんでもギラギラにしていた時期があったんです。その経験から、知らずのうちにデコレーションの土台ができたんだと思います。私の中では塗装もデコの延長線上にあるので、自分の肌に合っているんでしょうね。

▲左からデコった携帯、チェキ、恐竜

作品の世界観を広げるソフビたち

――現在開発中の新作ソフビは3種類あるんですよね。

はい。勇者のウォーリアーと二つ頭のジャイアント。こちらはドラゴンと魔法使いと同じ世界観のキャラクターで、乗り物に乗った宇宙人のスペースピーポー&スペースジェットはSFっぽい新しい世界観のイメージです。

▲今年新たにソフビ化されるキャラクターたち。左からウォーリアー、ジャイアント、スペースピーポー&スペースジェット

――立体になったキャラクターたちはいかがでしたか?

なんと言ってもウォーリアーのアゴが……(笑)! 私も最初に見た時は衝撃が大きすぎて「なんじゃこりゃ!?」と思いました。でも、あのケツアゴもアリというか、普通のアゴに戻しても面白くないので、むしろ良い個性だと思って修正はしませんでした。原型データは毎回ドキドキしながら見ているんですが、今回は過去イチの衝撃でしたね。

――スペースピーポーはどのようなキャラクターなのですか?

レトロフューチャーSFみたいな。そういうものすごく好きなんですよね。ちょっとチープでニセモノっぽい雰囲気というか、B級SF的な……。頭に被っている透明のフェイスカバーがポイントの一つです。ハート型なのが全く機能的じゃなくていいなと思っています。
イラストを家族に見せたらスペースジェットの形がおまるだと言われました。言われてみれば確かにそう見える……(笑)。

――ソフビをリリースしてから、活動への反響や変化はありましたか?

ソフビから私を知って、個展に来てくれる方がすごく増えましたね! 「何を見て知ってくださったんですか」って聞くと、「VINIYLでドラゴンのソフビ見て」って答えが返ってきたり。だからドラゴンは私にとって福の神的な存在です。丁寧にお家に飾ってます。

――最後に新作ソフビや個展を楽しみにしている方へのメッセージをお願いします。

ソフビに関しては、とにかく思い思いに楽しんで欲しいです。インスタでタグ付けしてくれた投稿とか、いつも楽しく拝見しています。ソフビファンの方っていろんなロケーションで写真を撮ったりしていて、本当に写真が上手なんです。ソフビに携わるようになってから私もカメラを始めたので、余計に皆さんの写真のうまさがわかるんですよね。新作ソフビも皆さんのオリジナリティを発揮して楽しんでもらえたら嬉しいです。

展示では、平面と立体の両方があることによって広がる世界観を楽しんでいただきたいです。ソフビ作家さんとはまた違った、イラストレーターならではの見せ方をすることで、作品の中に新しく見えてくるものがあればいいなと思います。

山崎若菜さん、ありがとうございました!
山崎若菜 新作ソフビ「ウォーリアー」「ジャイアント」「スペースピーポー&スペースジェット」は2025年発売予定! 最新情報は中空工房インスタグラムまで。

2024年8月@ケンエレファント
構成・編集:水口麗

[プロフィール]
山崎若菜

イラストレーター。1985年千葉生まれ。桑沢デザイン研究所卒。鮮やかな色彩とユーモラスなキャラクターを得意とし、ボールペンとデジタルで独自の世界を創る。広告やCMを中心にアパレル、TOYなど国内外でジャンルを問わず幅広く活動中。