
2024年7月にカプセルトイとして発売されたmojojojoフィギュアマスコット。ぬいぐるみの質感を再現したふわふわ感、手のひらサイズのころんとした可愛さは多くの人の心を射止め、SNSを中心に話題となりました。12月にはマスコット第2弾の発売も決定し、今後のmojojojoからも目が離せません。今回はそんなmojojojoを展開するぬいぐるみ作家の尾崎歩美さんにお話をうかがいました!
自分が心から可愛いと思えるぬいぐるみを
――素朴な疑問ですが「mojojojo」というブランド名の由来を教えてください。
十数年前のことになりますが、ブランドを始める頃に友達の子供と遊んだんです。4歳くらいの子だったんですが、私の名前(あゆみ)がうまく言えなくて、ずっと「あもみちゃん」って呼ばれていたんです。その言い間違いが可愛いなと思って。そこで、ぬいぐるみの「もじゃもじゃ」を子供が言い間違えたら……と考え「モジョジョジョ」となりました。
――可愛い由来ですね。ぬいぐるみを作り始めたのはいつからですか?
もともと工作がすごく好きだったので、子供の頃から何かしらは作っていましたが、ぬいぐるみを主軸にし始めたのは子供が産まれてからです。ハンドメイドを始めたばかりの頃は粘土でブローチなどを作っていました。

ただ、その頃からキャラクターっぽいものを作っていたので、作風の根っこは変わっていない気がします。自分に子供ができて、おもちゃ売り場に置いてあるぬいぐるみの中に、私自身が可愛いと思えるものがあまりなくて。最近のぬいぐるみって目が大きくてベビーフェイスな感じが多いと思うのですが、私はもっと素朴な感じのデザインが好きだったので、自分が欲しくなるようなぬいぐるみを作りたいと思って始めました。
――いわゆる“媚びていない”ぬいぐるみ、ですよね。
それです。実はカプセルトイにもなったTodd Friendsシリーズには、もとになったぬいぐるみが存在するんです。私の姉が小さい頃大切にしていた白いクマのぬいぐるみで、その子のシルエットが可愛いと思って作ったのがCherry on top(白いクマのぬいぐるみ)です。
――確かに耳の位置などシルエットが似ています。
私の中の“媚びていない”感じって、この子のイメージなんです。

――ぬいぐるみ制作でのこだわりを教えてください。
口をつけないことです。それはなぜかというと、持ち主がぬいぐるみに感情を寄せられるようにしたいからなんです。口って意外と表情が決まりやすいパーツなので、あえて口をつけないことで笑っているように見えたり、泣いているように見えたり、その時々で変化する表情を持ち主が感じられたらなと思っています。
――もとになったシロちゃんにも口がついていないですね。
本当ですね! いま気がつきました……これはたまたまです(笑)。
――mojojojoで展開されているTodd Friendsのようなポップなシリーズと、ナチュラルなシリーズにはコンセプトに違いはありますか?
どちらかというと、販売するお店の雰囲気に合わせたぬいぐるみを制作している感じです。ポップアップなどの際は、現地で直接お店を見たり、SNSで店内の画像をチェックしてこのお店の得意ジャンルは何かな?と考えることが多いです。
あとはその時の自分の中での流行ですね。なので明確にコンセプトが分かれている訳ではないかもしれません。
――雑貨店バイヤーの経験が生かされていますね。
バイヤーの経験は色々な場面で大きく関わっていると思います。なんというか、私は委託先のお店の店員さんにも「自分が売っているんだ」って思って欲しくて。
――すこし硬い言い方ですが「当事者意識を持つ」みたいな感じでしょうか。
そうですね。やっぱりぬいぐるみとお客さまをつなげてくださるのは店員さんなので、店員さんが自分ごととして捉えてくれた方が上手くいくんじゃないかと思うんです。だから私も、それぞれのお店のお客様のことを想像しながら制作をしています。

夢が形になって手のひらに! 話題沸騰のミニチュア化
――カプセルトイは7月に発売されて、瞬く間に大人気になりましたね。
私もどうしてあんなにバズったのかがわからなくて(笑)。きっかけになった投稿も見つけられていないんですよね。
――初見でもキュンとするデザインと造形なので、多くの人に刺さったんだと思います。やはり反響は大きかったですか?
もう全然違いました。何よりカプセルトイから知ってくれた方が本当にたくさんいて、お客さまも今までの2、3倍くらいに増えました。
――反響を感じる投稿が届いたりされますか?
私がいいなあと思ったのは「ガチャ詰めポーチ」ですね。mojojojoのマスコットと、いろんなミニチュアを組み合わせて作ってくださっていて、すごく可愛いんです……。全体の色味もちゃんと考えられていて、こういう楽しみ方もすごくいいですよね。汚れや落下防止にもなるし。
――ケンエレファントとの最初のつながりはVINYLでのポップアップですよね。 そうですね、2023年に開催させて頂きました。でも、そのポップアップはカプセルトイとは別のデザインの子たちでやっていたんです。プラスチックのおもちゃをイメージして作ったシリーズで、ちゃんと手足も動くようになっています。

――カプセルトイのオファーが来た時はどんな気持ちでしたか?
私はむにゅさんのカプセルトイが出てからケンエレさんを追いかけていたのですっごく嬉しかったです。むにゅさんも大好きなぬいぐるみ作家さんなのですが、なかなかぬいぐるみが手に入らなくて。だからフィギュアが出るなんて!と興奮しました。そこからケンエレさんのことはチェックしていて、発売されるカプセルトイがどれも可愛いからファンになっちゃって。
――それは弊社としても大変嬉しいですね!
数年前のデザインフェスタで、VINIYLの担当の方から名刺を頂いた時も「えっ! ケンエレさんじゃないですか! ファンです!」って言いました(笑)。しかも、主人にも言っていたんです。「私、フロッキーのフィギュアになりたい!」って。夢を口に出したら本当に実現してしまいました。
――カプセルトイの制作でこだわった部分はありますか?
はじめは、もとのぬいぐるみを忠実に再現した、左右非対称の原型を作ってくださったのですが、フィギュアとしての可愛さが大切だと思ったので、左右対称になるように調整をお願いしました。最初の造形もそれはそれでヤバみがあって好きでしたが、ケンエレさんのノウハウと技術力と表現力で、スーパー可愛いフィギュアになりました。

――完成したフィギュアを最初に見た時はいかがでしたか?
もう驚きと感動と可愛いという気持ちが入り混じった気持ちが顔にあらわれていたと思います。夢が現実になって、自分の手の中にあることにすごく感動して……。うれしくてすぐに主人と子供たちにも見せて自慢しました。
――mojojojoの今後の展望を教えて頂きたいです。
まず、ソフビをやりたいです! ソフビとか、フィギュアとか、ドールもコレクションしているくらい大好きで。集め始めたのは大人になってからですが、おもちゃがすごく好きなんです。昔アメリカに住んでいたことがあったのですが、家の近くにアンティーク街があったんです。もう本当に楽しい場所で……そこで昔のおもちゃとかドールがたくさん並んでいるのを見て、「集めてもいいんだ」って思いました。
――他に何かやってみたいことはありますか
今、3DCGも少し頑張っているんですが、短いループアニメを作れるくらいには上達したいですね。フィギュアになった子たちを面白がってくれる方がたくさんいらっしゃったので、せっかくならもう少し広げていきたいなと考えています。
――CGは最近始められたんですか?
CGは中学生の頃からシェードっていうソフトを使用して触ってはいたんです。でも当時のCG制作ってすごく難しくて、ポリゴンとかでメッシュを引っ張ってくる……みたいな。複雑でよくわからなかったんですが、いまは粘土を触るような感覚でできるからすごくわかりやすいですよね。
――mojojojoはどんなジャンルでも展開可能なんですね。
いろんな形で楽しめたらいいなと思っています。最近気づいたのですが、私がやっていることってキャラクターが中心なんです。だからそれを軸にして何ができるかを考えたら、楽しいかなって。
なんというか、ハンドメイドって「この素材を使うと決めたら、この素材しか使わない」みたいなところがあると思うんです。素材や技法ごとにジャンル分けされているイメージがあって。ですが私はmojojojoのキャラクターやデザインを使って新しく何ができるかを考えていきたいなと思っています。
――最後にマスコット第2弾を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。
ぜひ色々な方法で楽しんでいただきたいです。手にとってくれた方々が明るく、楽しい気持ちになってくれると私もすごく嬉しいです。
mojojojo尾崎さん、ありがとうございました!

2024年11月@ケンエレファント
構成・編集:水口麗
[プロフィール]

雑貨店のバイヤーを経て独学でぬいぐるみ作りを学び、2013年よりmojojojoの屋号で作家活動を開始。2022年に初めての著書『手縫いでちくちく どうぶつぬいぐるみ』を尾崎歩美名義で出版。 布帛のほか、粘土、樹脂、木材、紙など様々な素材や技法を用いてぬいぐるみや雑貨を製作しています。