
鍋パーティー当日、くまの”しゃけみつ”は大事な食材を全て忘れてきてしまいました。困ったしゃけみつは食材を探しに外へ飛び出しました! いったいしゃけみつはどこへ行ってしまったのでしょうか……?
探し絵本『きえたしゃけみつをさがせ!』の刊行を記念して、著者の禺吾朗さんに制作の裏側、またしゃけみつの秘密(?)についてお話をうかがいました。

ーー初の絵本刊行となりますが、これまでの活動で絵本を意識されたことはありましたか?
あまり意識したことはなかったかもしれません。ただ今回はじめて絵本を制作することになって、幼い頃に読んだ『ウォーリーを探せ!』だったり、ずっと絵を真似て描いていた『にゃんたんのゲームブック』という絵本たちを思い出し、そこからヒントを得ることもありました。
ーーさまざまなシチュエーションが登場しますが、どのようにアイデアを出されたのですか?
絵本を開くたびに旅行ができるような、毎ページ違うイメージが欲しいなと思っていました。全部が似たような絵になると子供はすぐに飽きてしまうので、最初から最後までページをめくってもらえるように場面を切り替えていきました。昔のゲームによくある、次のステージに進むと世界観ごと新しくなるようなイメージです。
ーーどのページも非常に奥行きがあって緻密なデザインなので、描くのもかなり大変でしたよね。
本当に大変でした。ページによって描き方が違っていて、例えばキャラバンのページはおみこしがメインなので、その動き方を決めてから細かい部分を足していったり、宮殿の場面はあらかじめ全て下書きを描いてから仕上げました。部分から描く時もあれば、全体を決めてから描いたものもあって、シーンごとに視点が移動するので描き方がばらばらになったのかなと思いますね。
お仕事では何度かこういったイラストを描いたことがあったのですが、一度にたくさん描くのは今回が初めてでした。大変な中にも、もちろん楽しさもありました。やれてよかったなと思っています。

ーー主人公の”しゃけみつ”は個性的な名前ですね。
くまの好物ですね。鮭とハチミツでしゃけみつ。しゃけみつをはじめとしたキャラクターたちは最近よく描いています。イラストのほかに漫画にも登場させていました。最初は名前もなかったんですけど……キャラのことを聞いてくれる方があまりにも多くて(笑)。後づけみたいな感じにはなりましたが、設定が増えていきました。名前をつけると愛着が湧きますね。
ーー一緒に鍋パーティーをしている4匹は”ンポコー”というこれまた個性的なチーム名があるんですよね。
アフリカに“ンゴロンゴロ”って場所があって、それが由来なんです。一応、彼らは国立公園の中にいる生き物、という軽い設定もあって、実は彼らは飼われている側面もあるんです。
本人たちはあんまり気づいていないみたいですが。人間は着ぐるみを着ることで仲間だと認識されるんです。じゃないと食べられちゃうんですね。
ーー食べられる!?
実は結構凶暴なんです。最初はそういう設定でやっていたんですけど、だんだんよくわからなくなってきています(笑)。初期の頃は着ぐるみを着た人間もよく出していたんですけど、だんだんキャラだけになっちゃいました。人間は食べられちゃったのかもしれないですね。
ーーそれこそ絵本の中にも不思議なシーンがありますよね。ロボット工場ではしゃけみつが量産されている……?
ですね。一応、しゃけみつだけちょっと超越しているんです。例えば宇宙でも水中でも、ヘルメットなしで息ができたり、しゃけみつの肖像画や風船が、モチーフとして背景にたくさん登場しますよね。なんというか、しゃけみつは神様的な存在に近くて、工場ではそれを量産しているような感じです。僕も完全に細かく考えているわけではないのですが。
ーー神様的存在……そうだったんですね。
結構前に漫画で描いたことがあるんですが、しゃけみつが死神と出会うエピソードがあるんです。死神から「心臓ちょうだい」って言われるんですけど、しゃけみつはバカだから「いいですよ」って言ってそのまま心臓を渡しちゃう。さすがの死神もちょっとかわいそうになって、自分の服をしゃけみつにあげるんです。そしたら今度はしゃけみつが死神になる……というようなお話もあったりして、しゃけみつは自分の中で神様っぽくしたいキャラなのかもしれないです。

ーーその片鱗が絵本の中から感じられるところが面白いなと思います。
僕も描いていて謎を感じてくれたら面白いかなって思っていました。しゃけみつってなんなん?って言うのが面白さになるなと。
ーーンポコーの他の子たちも何か設定があるんですか?
しゃけみつだけが特別な存在で、他の 3匹はまあまあ普通の子って感じです。でもしゃけみつが一番何もできないんですよ。変な話ですけど、心臓ちょうだいって言われてあげちゃうぐらいなんていうか素直というか、おバカというか……。
ーー鍋の食材も忘れちゃいますしね。

ーー制作の中で一番大変だったところと、一番楽しかったところを教えてください
大変だったのはレイヤー管理です。絵の移動などに便利なレイヤーなんですが、終盤はもうどこに何が重なっているかがわからなくなってきて……。最終の校正時にもレイヤーがおかしい部分がたくさん見つかりました。
ーー最大何レイヤーくらいまでいきましたか?
40〜50ぐらいはあったと思います。あんまり分けすぎてもダメなんですけど、分けておくと便利なんですよね。
逆に一番楽しかったのは、タコのクルーズ船のページです。唯一画角が真上なので他のイラストと少し違いますし、色合いも明るい雰囲気で描いていて楽しかったですね。
ー➖制作のなかで禺吾朗さんが大事にされていることはありますか ?
僕は「意図していないもの」がすごく好きなんです。
昔、人生で一番笑った日があったんですけど、「クレイジージャーニー」っていうテレビ番組で、スラム街に行った回があったんです。そこでレポーターが輪になって集まっている羊を見つけるんです。何があるのかな?と思ってその輪を覗いてみたのですが、なんにも無かったんです。
それが僕には死ぬど面白くて。今までで一番笑いました。その時「あ、これが自分かも」って思ったんです。謎なんですけど(笑)。なんで羊が集まっているのかもわからないし、動物が集まっているなら餌とか、何かありそうじゃないですか。でもなんにも無い。僕はこれが好きなんだと思いました。意味が無くてもただ存在しているものというか。
だから、可愛いものももちろん好きですが、ビジュアルよりその存在自体に惹かれているのかなと思います。あと、自分のSNSのプロフィールとかにも書いているんですが、ゴミみたいなものが好きなんです(笑)。それも「意図していない存在」という部分に近しいのかなと思います。
それが作品でうまく表現できたらいいなと思ってずっと描いているんですけど、自分がイラストレーターとして生きていく上で、そいうのばかり追うわけにもいかないので、うまくバランスをとっていきたいですね。
ーー今後やってみたいことや挑戦したいことはありますか?
立体をものを作ってみたいなという思いはあります。実は自分でちょっとこう使って作ってみているものもあるんです。あとは僕は小さい時からゲームに慣れ親しんできたのでゲームはいつか作ってみたいですね。

ーー民芸品っぽさがありますね。土粘土のような。
民芸品とか民族っぽいものも好きで。結構僕のものづくりの原点というか、それに近い部分があるかもしれません。最近はキャラクターを前に出して描いていますけど、昔はそういうテイストの絵も描いていたので、今の作風とミックスして描いていけたらいいなと思っています。
色々な文化に触れて、そこから自分だけの新しいものが生み出せたら嬉しいですね。
ーー最後に読者の方へメッセージをお願いします!
しゃけみつを探すのはもちろん、絵の中にはちょっとした謎や物語を発見できる可能性を散りばめているので、そこを楽しんでもらえたら嬉しいです。
禺吾朗さん、ありがとうございました!
[プロフィール]

禺吾朗(ぐうごろう)
イラストレーター。大分県生まれ、大阪府在住。散歩の途中で出会う風景や骨董市で見つけた物をイメージの源泉とし、ドローイング、アニメーション、立体などを横断して制作。CDジャケットやMV、書籍、広告などにイラストレーションを提供するほか、展示やイベントにて作品およびグッズを発表・販売している。









