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2022.01.27

05 感動するゴミ捨て場【渋谷ヒカリエ】

今井夕華

編集者にして無類の“バックヤードウォッチャー”である今井夕華が、さまざまな施設、企業、お店の“裏側”に潜入して、その現場ならではの道具やレイアウト、独自のルールといったバックヤードの知恵をマニアックに紹介する連載企画。

表舞台編

こんにちは。編集者でバックヤードウォッチャーの今井夕華です。連載5回目の今回は、なんと渋谷のランドマーク的存在、渋谷ヒカリエの裏側にお邪魔させてもらいました! 普段から、買い物や展示などでよく行っていた場所なのでとってもワクワクです。


©Shibuya Hikarie

知っている方も多いとは思いますが、改めて紹介しておくと、渋谷ヒカリエは2012年にオープンした渋谷駅直結の高層複合商業施設。ショップやカフェ、レストランをはじめ、8階にあるクリエイティブスペースも特徴的です。d47食堂の窓際の席で、ゆっくりご飯食べながらぼーっとするの最高なんだよなー。ミュージカル劇場、東急シアターオーブもあります。今回は8階と、共用の荷捌き場メインでお届けしていきます!


©satoshi Nagare

舞台裏編

隣り合った「出入口」と「通用口」

取材当日。エスカレーターで渋谷ヒカリエの8階に上がります。イベントスペース、COURT前で待ち合わせたのは、渋谷ヒカリエの8階を運営管理している髙橋さん(写真右)と作永さん(写真左)。写真中央は筆者です。


髙橋さんはイベントで少し前にお世話になって以来、作永さんははじめましてだったので、簡単にご挨拶をしてから、さっそく建物裏手にある通用口に連れて行ってもらいました。

左が「渋谷ヒカリエ関係者出入口」で右が「従業員通用口」。出入口と通用口、微妙なニュアンスの違いが愛おしいですね。実際何が違うんだろうという感じですが、左は扉が観音開きになっていて、荷台なども通れる仕様です。

バックヤード的広々空間

中に入って「荷捌き場」に向かいます。みんながあまり使わないバックヤードの階段って、こんな感じでなんか、不意にちょっと広い謎の空間が現れることありますよね。踊り場というかなんというか、ちょっと広い、ガランとした空間。

階段はトマソンチックな雰囲気ですが、開けてみるときちんと外につながっていました。無機的なバックヤードと、扉の外に広がる渋谷の雑踏という対比、クラクラします。

サイバー感のある荷捌き場

荷捌き場はこんな感じ。大きなトラックたちが忙しく行き交っています。働く車ってかっこいいですよね。中央のターンテーブルもさすがのビッグサイズです。天井に通っている配管と蛍光灯がサイバーな雰囲気を醸し出しています。


荷捌き場まで運ばれた荷物は、ヤマト運輸が全部一度受け取ってから、各テナントに配達していくそう。確かに、違う運送業者がバラバラ出入りしてたら面倒だもんな。大きな商業施設だからこそ、仕組みがよくできていて勉強になります。カゴ台車はとってもカラフルで可愛い!

ゴミ捨て場に感動!

続いては、荷捌き場横にあるゴミ捨て場に来ました。こちらもカゴ台車ですっきりと整頓されています。嫌な臭いは一切しないし、床のベタつきや液体汚れ、ホコリも全然ありません。照明も明るくて、かなり綺麗な印象。ゴミ捨て場というよりも、海外の業務スーパーみたいです! こんなに美しいゴミ捨て場、初めて!


表示サインには英語表記とイラストアイコンもあって、外国人スタッフにも分かりやすくなっています。

聞けば「春江」という廃棄物処理業者さんが入って管理をしているそう。汚れを見つけたらこまめに掃除しているということで、さすがの清潔感です。


ちなみに取材日はクリスマス当日。渋谷ヒカリエは、ケーキやプレゼントを買う人で大賑わいのてんてこまい。1年のうちでも最もダンボールゴミが多く出る日のひとつだそうですが、この整えられよう! キラキラとしたデパートの裏には、粛々と頑張る春江さんという縁の下の力持ちがいたんですね。いやー、素晴らしすぎます。

差し色の緑がアクセント

こちらはゴミの計量機。各テナントでゴミが出たら、まずここに運んできて重さを測ります。機械からシールが出てくるので袋に貼って、それぞれの置き場へ。重さに応じて処理代が請求されるという仕組みです。


緑の養生テープ使いが最高ですね! 差し色というか、縁取りというか。非常にパンチが効いています。どんどん貼り足していったのかなあ。こういう掲示物、大好きです。汚れ防止のためか、全てしっかりとラミネート済み。

掃除用具は隅にまとめています。ロッカーにはジャンパーと替えの作業着が。扉は常に開けっ放しにするスタイルなのでしょうか、扉にホースリールが掛けられています。左のメタルラックには、洗剤、漂白剤などを発見。滑り止め付きの手袋や、錆止めや研磨剤は、ゴミを運搬する昇降機のメンテナンス用ですかね。すっきりと整理整頓されたゴミ捨てエリアとは対照的で、こちらは自分たちだけが快適に使えればOKな、用の美コーナーといった感じ。うーん、どっちも最高!

一人暮らしできちゃうほどの巨大エレベーター

続いては、シアターオーブなどの文化施設へとつながる、巨大エレベーターに案内してもらいました。で、でかすぎるー! 舞台装置や大道具などを運ぶため、かなりのビックサイズになっています。車も入っちゃいますよ。


身長167cmの私と比べるとこんな感じ。天井も高くて、冗談抜きに自分のマンションの部屋より広いんじゃないかしらというレベルです。渋谷駅徒歩0分の角部屋なので、本当に住んだら家賃はエグいと思いますが、かなり快適に過ごせそうな広々空間です。バッチリ養生済みなので、ハードな搬入搬出でも安心!

誰もが使いやすい備品倉庫

続いて、8階の備品倉庫にも案内してもらいました。展示やイベントスペースを利用する際には、利用者さん達がそれぞれ、ここから備品を出し入れします。それぞれの備品にアクセスしやすいよう、自然と通路ができていますね。


重たいものには台車やキャスターが付いているので、体力や年齢性別問わず誰にでも運びやすく、備品も傷付かない仕組みに。「こうやって運んでね」という配慮がなされた、素晴らしい導線設計です。ゴミ捨て場とは違って、置き場の指定や表示サインは無いため、伝言ゲームのように出し入れが繰り返されていますが、ほとんど配置が変わらないそう。それってすごいことですよね! 利用者さん達の意識が高いのもありそうですが、空間に対しての物量がちょうど良かったり、多少荒れたとしても、ちゃんとものを動かせる通路は確保できていたり。その辺りの導線がちゃんとデザインされているんだろうな。


イームズチェアはめちゃめちゃカラフル! 単品でも美しいけど、積み重ねても綺麗ですね〜。バックヤードを取材していると、こういう「見せるものじゃないんだけど美しいもの」にたくさん出会えるのでとても嬉しいです。

ちなみに備品のセレクトは、8/運営事務局と、東急の意見を聞きながら、D&DEPARTMENTが担当したそう。ここにも、ロングライフデザインの精神が宿っていたんですね。

窓のない事務室では、お茶の時間が癒し

事務室にも案内してもらいました。奥に細長いつくりの部屋で、ブルーの壁がおしゃれ! 大きなホワイトボードには月間のスケジュールが書かれています。担当者の名前や会議名が書かれたオリジナルマグネットを上手に活用している模様。


こちらは作永さんのデスク。みなさん横並びで、ノートパソコンを使っています。壁にはイベントスケジュールや付箋がペタペタ。イベントで頂いたというソフビたちが見守っています。

お茶やコーヒーは、ドリンクバーなみに選び放題! こういう箱の蓋をちぎっておくのって大事ですよね。作永さんによると、事務室には窓が無いため、ここでいかに快適に過ごせるか、というのがポイントになってくるとか。冷蔵庫には、誰が一番上手いか勝負したという、キャラクターのイラストもありました。


今回のバックヤードは、キラキラした表側からは想像できない、美しいゴミ捨て場が特に印象的で、渋谷ヒカリエのことがもっと好きになりました。髙橋さん、作永さん、渋谷ヒカリエのみなさん、お邪魔しました!

髙橋和也
Kazuya TAKAHASHI

不動産ディベロッパーにて大手町の複合ビル再開発プロジェクトや仙台市内のショッピングセンター運営管理などに携わった後、2019年に東急株式会社入社。主にCreative Space 8/やヒカリエデッキの運営を担当し、渋谷からの文化発信について日々模索中。

作永理那
Rina SAKUNAGA

2018年に株式会社アートフロントギャラリー入社。入社当初より8/運営事務局にてCreative Space 8/にあるCOURT、CUBE1,2,3の会場管理業務を担当。作品制作と展示一体型の期間限定ギャラリーATELIERの立ち上げにも参加。コロナ禍のアーティストを応援する公募展「アーティスト支援プラン」企画。アートやカルチャーの発展のため毎日試行錯誤している。 https://www.hikarie8.com/home.shtml

今井夕華

Yuka IMAI
フリーランスの編集者/バックヤードウォッチャー。1993年群馬県生まれ。多摩美術大学卒業。小学校の頃から社会科見学が好きで、大学の卒業制作では多数の染織工場を取材。求人サイト「日本仕事百貨」を経て2020年フリーランスに。人間味あふれるバックヤードと、何かが大好きでたまらない人が大好きです。

https://imaiyuka.net/