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2022.08.25

謎のカレー屋の店主は、空の雲を自在に操った|吉村智樹(ライター)

文:吉村智樹  朗読:アズマモカ

僕をつくったあの店は、もうない。

都築響一編『Neverland Diner 二度と行けないあの店で』(2021年1月刊)は、100名の書き手が、それぞれのスタイルで“二度と行けない店”について綴った珠玉のエッセイ集です。

そんなネバダイの世界をよりディープに味わっていただくべく、「ネバダイ・オーディオブック」として、本書に収録された100話のなかから作品をセレクトして、朗読版の音声トラックを週イチで無料公開していきます。

朗読者は、女優の冨手麻妙さん、タレント・ナレーターの茂木淳一さん、朗読少女・アズマモカさん。それぞれのスタイルでネバダイ珠玉の一篇を朗読していただきます。

謎のカレー屋の店主は、空の雲を自在に操った|吉村智樹(ライター) ※冒頭文抜粋

 僕は「超能力」というものに強い関心がある人ではない。そこへさらに宗教やスピリチュアルの要素が加われば、うさんくさく感じ、できるだけ遠ざかろうとしてしまう。

 しかし……実際に「あれ」を見せられてから、超能力の存在そのものは否定できなくなった。かつて千葉県成田市に存在した「王様の蔵」というカレー屋さん。そこのオーナーのTさんが、僕の眼の前で、指先で、空に浮かぶ雲を自在に操ったのだ。

 Tさんが指を右へ左へと動かすと、雲はうながされるように指の動きに合わせて左右に移動した。さらにTさんが指を大きくぐるぐるまわすと、雲もその動きに従い、龍が躍るかのように空中回転しはじめたのだ。いまそれを証明できるものはなにもないが、噓じゃない。間違いない。夢や幻ではない。手元に動画を撮影する機材がなかったことが、いまだに悔しくてならない。

NeWORLD · 謎のカレー屋の店主は、空の雲を自在に操った|吉村智樹(ライター) 朗読=アズマモカ
書籍情報

Neverland Diner 二度と行けないあの店で
都築響一 編


↑書影をクリックして詳細へ

体裁:四六判変形/並製/カバー装
頁数:640頁(カラー写真頁含)
定価:3,300円+税
刊行:2021年1月22日
ISBN 978-4-910315-02-7 C0095

アズマモカ

azumamoca
YouTubeに朗読動画を投稿する10代の朗読少女。
好きな作家は最果タヒ。某2次元アイドルに夢中。
小説、短歌、絵本などの文学から、漫才、円周率、Amazonレビューなど幅広いジャンルを読み漁っている。

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