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2022.07.14

三鷹アンダーグラウンド|平民金子(文筆家/写真家)

文:平民金子  朗読:茂木淳一

僕をつくったあの店は、もうない。

都築響一編『Neverland Diner 二度と行けないあの店で』(2021年1月刊)は、100名の書き手が、それぞれのスタイルで“二度と行けない店”について綴った珠玉のエッセイ集です。

そんなネバダイの世界をよりディープに味わっていただくべく、「ネバダイ・オーディオブック」として、本書に収録された100話のなかから作品をセレクトして、朗読版の音声トラックを週イチで無料公開していきます。

朗読者は、女優の冨手麻妙さん、タレント・ナレーターの茂木淳一さん、朗読少女・アズマモカさん。それぞれのスタイルでネバダイ珠玉の一篇を朗読していただきます。

三鷹アンダーグラウンド|平民金子(文筆家/写真家)※冒頭文抜粋

 三鷹駅の南口を降りて中央通りをほんの1分ほど歩けば、左手に吉野家が目印のニューエミネンスビルがある。そこの階段を地下に下りると三鷹アンダーグラウンドカルチャー(地下飲食店街)の心臓部である喫茶店リスボンと中華そば「みたか」に辿り着くだろう。トイレは両店共用、和式。

 2011年の4月。その頃西荻窪に住んでいた妻と私は、前年に「江ぐち」の味を継承し屋号を「みたか」とあらためた新しい中華そば屋を応援するような気持ちで、たまにここでラーメンを食べ、帰りにリスボンでコーヒーを飲むのが習慣だった。
 その日もいつものように食後にリスボンのカウンター席に座っていると、ドアの鐘を勢いよく鳴らしてジーパンに黒い革ジャン、地下なのにサングラスをかけたごま塩頭のおじさんが入ってきて「これおいしいんだよなあ。おいしいんだ」とひとりごとのように告げてカウンターのマスターに袋に入った食パンを投げ渡した。
 なんだかいい感じの人が来たなあと思った私は妻と顔を見合わせ、「こういう人って、この後どこに行ったりするんやろうな」なんて話をした。

NeWORLD · 三鷹アンダーグラウンド|平民金子(文筆家/写真家) 朗読=茂木淳一
書籍情報

Neverland Diner 二度と行けないあの店で
都築響一 編


↑書影をクリックして詳細へ

体裁:四六判変形/並製/カバー装
頁数:640頁(カラー写真頁含)
定価:3,300円+税
刊行:2021年1月22日
ISBN 978-4-910315-02-7 C0095

茂木淳一

MOGY Junwich
1972年群馬県生まれ。1993年よりライブソリューション「千葉レーダ」として歌と司会と雰囲気を展開。JRAシネマ競馬「ジャパンワールドカップ」シリーズや、今年20周年を迎えたコンテンツ「スキージャンプ・ペア」シリーズでは台詞コーディネイトを含む「実況調ナレーション」を担当。現在、スマートフォン向けゲームアプリ「ウマ娘 プリティーダービー」の実況をはじめ、ナレーション、イベント・番組MC、そして役者など、その活動は多岐にわたる。

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