僕をつくったあの店は、もうない。
都築響一編『Neverland Diner 二度と行けないあの店で』(2021年1月刊)は、100名の書き手が、それぞれのスタイルで“二度と行けない店”について綴った珠玉のエッセイ集です。
そんなネバダイの世界をよりディープに味わっていただくべく、「ネバダイ・オーディオブック」として、本書に収録された100話のなかから作品をセレクトして、朗読版の音声トラックを週イチで無料公開していきます。
朗読者は、女優の冨手麻妙さん、タレント・ナレーターの茂木淳一さん、朗読少女・アズマモカさん。それぞれのスタイルでネバダイ珠玉の一篇を朗読していただきます。
呪いの失恋牛すじカレー|谷口菜津子(イラストレーター/漫画家) ※冒頭文抜粋
店に行けないのならば作ればいい!
長年、あの味を思い出しながら牛すじカレー作りに挑戦し続けていた。
牛すじを何度か湯こぼしし、柔らかになるまで3、4時間煮込む。
店の棚に並ぶ食材の景色、味の印象の記憶を頼りにスパイスを選ぶ。
バターで玉ねぎを飴色に炒め、トマトも煮詰まるまでよく炒め、牛スジを加えとろとろになるまで煮込む。
完成したカレーは手間暇かけただけあってとっても美味しい。でも、あの味ではない……。
あの牛スジがとろっとろで濃厚で、一皿食べただけで「今日の食事はもういい! 余韻を忘れたくない!」と思わせるようなあの牛スジカレー。
末広町にあるカレー屋「ブラウニー」。
書籍情報
Neverland Diner 二度と行けないあの店で
都築響一 編
体裁:四六判変形/並製/カバー装
頁数:640頁(カラー写真頁含)
定価:3,300円+税
刊行:2021年1月22日
ISBN 978-4-910315-02-7 C0095