採U記

第4回  かみがみに遊ばれる

日下慶太

    UFOはどこで見られるのか?よく聞かれる質問である。パワースポットと巨石がある場所がよく出ると言われている。イギリスのストーンヘンジや、日本のストーンヘンジ、唐人駄場はまさにそうで、そこでUFOが出たことを身を以て体験したわけである。福島市飯野町の千貫森には付近に巨石があり、UFOの目撃談が多い。『UFOの里』という公共施設まであるほどである。どうして、巨石の出るところにUFOが出るのか。諸説あるが私なりにまとめてみる。

1 巨石があった場所は祭壇であり、宇宙に祈りを捧げていた。


唐人駄場の巨石と看板

    ストーンヘンジ、唐人駄場、秋田県鹿角市の大湯ストーンサークルなどなど。日本各地の神社では磐座として石を祀っている場所も多い。宇宙、神に向かって人々が祈っていた場所である。その場所自体に何か不思議なパワーがあり、そこに巨石という目印を置いたのかもしれない。縄文の巨石遺跡のまわりには土偶という宇宙人らしきものも発掘されている。

2 異星人が巨石建造物を作った。


2010 著者撮影

    ギザの三大ピラミッドがまさにそうで、あんな巨大な石をどうしてあんな上まで運搬できたのか、どうやって加工したのかということが謎となっている。このあたり、グラハム・ハンコックの『神々の指紋』に詳しい。グラハム氏は古代には高度な巨石文明があったと説いている。

    文明というのは少しずつ発展していく。人力車、馬車、自動車、飛行機となっていくように。固定電話、ポケベル、PHS、携帯、スマホとなっていくように。ただ、ギザの三大ピラミッドはいきなり最高の状態で歴史に登場し、それ以降に作られたピラミッドはギザと違って、小さな石を積み重ねたもので完成度が低く崩壊が進んでいる。この、突然変異はどうも説明がつかない。


By NASA, Rogelio Bernal Andreo, cmglee – ISS-32 Pyramids at Giza, Egypt rectified crop.jpgOrion Head to Toe.jpg, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=132087475

    グラハム氏は巨石を扱う文明をもった宇宙人がやってきて、また立ち去ったのではないかと結んでいる。ギザの三大ピラミッドは一直線には並んでいない。それはオリオン座の3つと同じ並びをしている。そして、ナイル川は天の川の位置に符合している。古代人はピラミッドで地上に天体を表現していたと説いている。

3 巨石は宇宙船であった。


磐船神社の御神体

    大阪府交野市にある磐船神社。境内にはたくさんの巨石があり、それが積み上がって洞窟のようになって、中を歩くことができる。御神体の巨石は饒速日命(ニギハヤイノミコト)が高天原より降臨した際に乗っていた「天の磐船」である。高さ12メートル、幅12メートルもある。饒速日命は、大和を建国せよとの指令を天照大神(アマテラスオオミカミ)から受けて、天の磐船に乗って高天原からやってきた。島根県松江市にある神魂神社にも、天穂日命(アメノホヒノミコト)が高天原から乗ってきたと言われている磐船がある。奈良県橿原市にある益田岩舟は誰が乗ってきたかはわからないがまさにUFOのようである。

    岩舟、つまり巨石は船、宇宙船であったのだ。そして、神様は宇宙人であり、石に乗って宇宙から来たのではないか。

    そんなことを誰に話すでもなく、一人で悶々と考えていた頃、仕事で愛知の岡崎に行った。仕事だけ終えてそのまま大阪にUターンするのも寂しいので、せっかくなので岡崎を散歩しようと、観光名所の岡崎城に行ってみた。

    ここは徳川家康の生地である。だから、町は徳川家康推し。家康グッズやのぼりがたくさんだ。徳川に負けた大阪からきた私は少し複雑である。街の喧騒から離れ、乙川沿いを歩いていた。乙川の河川敷は街と自然の緩衝地帯となっていて、岡崎にゆとりをもたせている。東海地方というのは気候も温暖で豊かやなあ、こりゃ、全国を制覇する力あるわなあ、なんて思っていると、菅生神社というよい感じの神社を見つけた。大きくもなく、小さくもない。100m四方の神社である。鳥居をくぐり、社殿の前で手を合わせた。

「神様は宇宙からやってきたのですか?」

    手を合わせて尋ねてみた。すると、神様が「ふふふ」と笑った気がした。それは、男とも女ともとれる中性的な声だった。私は、いつも神社で神様の声が聞こえるような気がするのである。時には厳かな声であり、時にはその辺のおっさんのような声である。実際に聞こえているのか、聞こえた気になって脳内再生しているのかはわからない。神は見えたことはない。

    参拝を終え、神殿の左にある社務所で朱印をもらった。仕事でいろんな土地に行くため、いつもカバンに朱印帳を常備している。よい朱印だったので写真に撮ろうと机の上にもらったばかりの朱印を広げた。右ページに朱印があり、左ページに墨がつかないようにする半紙がある。写真を撮ろうとしたその時、風が吹いて半紙が宙に舞い上がった。くるくると回りながら社殿の方に飛んで行った。私は半紙を追いかけた。それは高さ20mほどの社殿の屋根よりも上で舞っている。鏡と鳥居と私を結ぶ一直線上で、位置は変えずにずっと回転している。これは、神様に完璧に遊ばれている。私はしばらく紙を見つめていた。

    20秒ぐらい経ったころだろうか、動力を失ったかのように回転を止めてふらふらと紙が落ちてきた。私は走って紙を追いかけ、真剣白刃取りのようにバスっと紙を挟んでキャッチした。そこはちょうど鳥居のギリギリで、あと数十センチで境内の外であった。紙は神の領域の中で神となれるのだろう。紙が飛んだので神は宇宙から来たのだ。「お前の考え方は正解」と伝えるために唐人駄場でUFOが出たように、神は紙を飛ばしてまた「正解」と私に伝えたのだ。

 
 
 
 

日下慶太

日下慶太

KEITA KUSAKA
コピーライター・写真家・コンタクティ・シーシャ屋スタッフ
1976年大阪生まれ大阪在住。自分がどこに向かっているかわかりません。著作に自伝的エッセイ『迷子のコピーライター』(イーストプレス)、写真集『隙ある風景』(私家版 )。連載 Meet Regional『隙ある風景』山陰中央新報『羅針盤』Tabistory『つれないつり』。佐治敬三賞、グッドデザイン賞、TCC最高新人賞、KYOTOGRAPHIE DELTA award ほか受賞。