2023年9月20-21日
私は撮影せずにはいられなくなった。どこかUFOが出そうな場所はないかと調べた。
「山形県 UFO」
「栃木県 UFO」
「山形県 パワースポット」
「栃木県 パワースポット」
まずは大きなUFO目撃事件が出る場合が多い。例えば、「高知県 UFO」だと有名な介良事件が出てくる。しかし、そういったことがない場合はだいたい、YoutubeのUFO目撃映像か、スピリチュアルな人のブログが検索結果に出てくる。その中から、ルート的に無理がないか、車で行けそうかということを考える。山頂の山小屋といった登山が必要な場合もある。よさそうな場所があれば、そのあたりで「展望台」を検索して、撮影ポイントを探す。
那須にはUFOの目撃談があり、展望台もある。活火山の蔵王を発ち、活火山の那須岳を目指す。活火山の近くはUFOもよく出るようだ。
東北道を南下する。車内の音楽の選曲に悩んでいると、那須を通り過ぎてしまった。その先の矢板で降りた。一般道を行くと左手に畑があり、奥には雄大な山並がそびえる。このあたりで撮影するのもよいかもしれないと思いながらも、山に近い方がいいに決まっているとの思い込みもあり、那須岳近くの展望台を目指した。
那須の温泉街を抜けると、道路沿いに那須高原展望があった。「恋人の聖地」となっている。カップルが来て、夜景を見ながらキスでもするのだろう。私は宇宙が恋人だ。UFOよ、現れたまえ。しかし、あいにくの曇り空で星が全く見えない。那須岳も見えない。さらに小雨が降ってきた。カメラも濡れてきた。もう温泉に入るしかない。撮影をあきらめ、ひと風呂入って車中泊をした。
一夜明け、那須からしばらく東北道を南下したあとに、北関東自動車道へ入った。群馬を通り過ぎ、長野に入り、佐久で高速を下りた。信州の山は東北と違い、どこか洗練されている。観光地として様々な資本が入っているからではあるが、一本の木々でさえ、洗練されているように思えた。
「女神湖」という湖というには小さい池があった。ただならぬオーラがある。水中からUFOが現れて、女神が出てこないかと思ってしばらく待機していたが何も起こらなかった。カメラでも落としてみようか。
「あなたが落としたのはこのソニーのカメラですか、それともこのハッセルブラッドのカメラですか?」
私はソニーを選んでハッセルブラッドのカメラも手にいれるのだ。しかし、待てども女神が現れなかった。
茅野を過ぎた。日本の誇るパワースポット、諏訪湖で撮影しようと思ったが、天気がよくなかったので行き先を変更した。高遠という美しい城下町を抜けて、「対向車よ、頼むから来ないでくれ」と念じるしかない細い山道を登り、ようやくたどり着いた。
長野県伊那市にある分杭(ぶんくい)峠。ゼロ磁場と言われ、全国有数のパワースポットとして知られている。 UFO基地がある、写真を撮影するとオーブが出る、などといった話がある。
標高は1,424メートル。「峠」と名前がつくだけあって、まさにそこは峠になっていて、峠を越えるすぐに下り坂になる。峠の少し下に広場があり、案内図があった。
「気場」と「新気場」というポイントがある。そこで気を強く感じられるということだろうか。そして、元々あった気場から、さらに新しく気が強いとこが見つけ出されたということだろうか。それとも、観光客が多くなり、2箇所の気場に分けなくてはいけなかったのだろうか。ちなみに、大丸松坂屋の本社があるところが木場であり、東京駅からディズニーランドに行くには新木場で乗り換えなくてはいけない。
「気」という曖昧なものをこう堂々と表出されると不思議な気持ちになる。まずはすぐ近くにあった新気場へ。山の斜面が階段上になっていて、そこに木製のベンチが置かれている。ここで気を感じろということか。しかし、新とつくだけあって新しく、白いビニールテントが気を摂取する邪魔をする。
ここを離れ、5分ほど歩いて気場に到着した。森の中に木製のベンチが斜面に沿って階段上に置かれている。ここはよさそうだ。夕方なので誰もいなかった。雨が降っていて、ベンチは濡れていた。しかし、私は気を感じたかった。おしりが濡れてひんやりとするが、そのままそこに目を閉じて座り続けた。
ポカポカと体が暖かくなってきたような気がする。気のせいかもしれない。自分が何かに包まれているような気がする。気のせいかもしれない。目を閉じるとうーんという小さな振動音が聞こえる。これは気のせいではない。大石神ピラミッドでも同じような音が聞こえた。
写真を撮ると何か白い円が映った。気を映すことができたかもしれない。しかし、よく見るとレンズに水滴がついているだけであった。
車に戻り、UFOの撮影の準備をした。仕事を終えた工事のおじさんとすれ違った。
「何してるんですか?」
「星空を撮っています」
私はいつもの定型文で答えた。
「熊は出ますか?」
「ここは出ませんよ」
東北は危ないが長野まで下れば大丈夫か。よし、安心して撮影に集中できる。三脚を立て、見晴らしのよい南側に向けてカメラを構えていると、軽自動車が登ってきて、中からおばさんが2人降りてきた。
何か注意されるのだろうかと思ったが、椅子を取り出して瞑想を始めた。この人たちもUFOを呼んでいるんだろうか、それとも気を吸収しに来たのだろうか。二人とも衣装が白なのは何か意味があるのだろうか。
上に気配を感じて撮った。あとで見ると何かが映っていた。鳥とは違うシルエットである。飛んでいた植物か何かかもしれないが、風はあまりなかった。
おばさんたちは会話することもなく瞑想を続けている。「何をしているのですか?」と尋ねたかったがその問いはブーメランとなって私に返ってくるだろう。この種の人にいつもの定型文は通用しない。私は本当の目的を答えなくてはいけない。そこから、拒否反応が起こるか、逆に、長い話がはじまるかもしれない。私は撮影に集中したかった。軽く会釈をするだけに止めておいた。おばさんたちは日が沈むと帰っていった。
私は残って撮影を続けた。しかし、雲が出てきて、小雨も降ってきた。粘って撮影を続けたが、夜の雨は冷たい。そろそろ、撮影を終えようと思った時に、謎の赤い光が夜空に動いていた。雨が降るほどに雲が出ていたので星ではない。飛行機でもなかった。これは一体なんだろう。

30 F9.0 24mm ISO 3200 / SONY ILCE-7M4 + DT 16-35mm F2.8 SAM
撮影を終えて帰路についた。夜中の高速を運転する。途中、愛知の一宮 パーキングエリアでコーヒーを買おうとすると、財布がないことに気づいた。さっき、トイレに行った岐阜の恵那峡のサービスエリアで財布を置きっぱなしにしてしまったことに気づいた。施設に電話をすると財布を預かっているという。日本に生まれてよかった。これも宇宙のご加護だ。気場の気をいただいたからだ。財布は送ることはできないので取りに行くしかない。片道1時間の道を戻って財布を取りに行った。大阪に着いたのは明け方だった。