採U記

第12回  男鹿半島の飛行体

日下慶太

2023年9月17日

9月にまた仕事が三戸であった。仕事を終えて再び大湯へと入った。まだ9月の中旬で、北東北といえど過ごしやすい気候である。


また大湯のストーンサークルへ行く。しかし、雲でほとんど空が見えずに、すぐに撤収する。


30 F6.3 ISO 1600 / SONY ILCE-7M4 + DT 16-35mm F2.8 SAM

翌日は快晴だった。迷ヶ平で撮影をすることにした。ここ一帯は山の中なのに「平」というだけあって、台地になっていて見晴らしがよい。しかし、風力発電のプロペラが立っている。一戸でもそうであったが、プロペラは夜間はチカチカと光り、撮影に干渉してくる邪魔な存在だ。プロペラがあることで大地の力を奪っているような気になってくる。

迷ヶ平の南側の牧草地付近にはプロペラはなかった。牧草地の傍に車を止めて撮影のスタンバイをした。ちょうど、カメラをセッティングしてすぐに上空を2つの光が横切った。人工衛星のような気もするが、幸先のよいスタートだ。


20 F7.1 ISO 3200 / SONY ILCE-7M4 + DT 16-35mm F2.8 SAM

夕日が沈んですぐに西の空に見たことのない質感の光が現れた。光っているというよりは燃えているようである。軌跡も真っ直ぐではなく曲がっている。これはUFOかもしれない。


興奮しているとその光は点滅に変わった。飛行機だった。大館能代空港から離陸する飛行機だろう。その後も周辺でたくさん似たような光が出た。どれも飛行機だった。


意気消沈していると、周りを明るく照らす明るい光が出た。UFOだったらいいなと思うものの、おそらく国際宇宙ステーションだろう。


頭の真上を光が横切って行った。これも明るい。しかし、これ以降パタっと、UFOが出そうな気配がなくなっていた。熊が出そうな気配がした。芽生えた恐怖心がUFOを来なくさせているのかもしれない。とりあえず移動することにした。


車で30分ほど移動して、また十和田湖の瞰湖台に行く。以前来た時に、急に飛んでいった謎の光をカメラに収めたかった。前は到着してすぐに出たので、今回はもうすべてを事前にスタンバイしてからすぐに撮影しようと心がけた。まるで、そこに動物がいるかのように慎重に。しかし、その光は現れなかった。迷ヶ平より曇っていた。数カット写真を撮っただけで移動した。湖の上は水が蒸発して雲が多くなるのだろうか、ここはいつも曇りがちだ。

そこからまた30分、大湯方面に戻り黒又山へと行く。黒又山の周囲には民家があって街灯が明るい。しかし、安心感がある。


路肩に車を止めて撮影を試みる。黒又山の右に黒い影がある


少しだけ場所を右へ移動させて約30秒後に撮影した。レンズの汚れかと思ったが、この1分後に撮影したものにはこれは写っていなかった。雲にしては遠近感がおかしい。一体なんだろうか。


20 F4.5 ISO 1600 / SONY ILCE-7M4 + DT 16-35mm F2.8 SAM

曇ってきたので、ストーンサークル近くの浅間神社付近へ移動する。いつもきている場所である。社を守るように生えている木々を撮ると、左上に並行に飛ぶ光の線があった。人工衛星はこんな並走するのだろうか。もう星が見えなくなってきたのと、眠気がきたので帰路に着いた。

今日は1日4箇所も場所を変えた。せわしないが、場所を変えると、その場の気も変わるので、同じ場所で出ずに粘っているよりもいいかもしれない。釣れないからと、どんどんポイントを変えていくかのようである。そういえば、UFOの撮影は釣りと似ている。釣れるポイントを選び、魚を待つ。釣りは大潮の時がいい。UFOは新月に近い方が撮影しやすい。月に左右されるのも同じだ。そして、大物が釣れることもあれば、まったく釣れないこともある。

翌日、大湯の友人のカナさんから「ケイタさんが撮影をしていた迷ヶ平のあたり、昨日車で通ったら熊がいましたよ」とメッセージがきた。クマに襲われた事件が何度か起こっている場所である。私が感じた気配も間違いではなかったのかもしれない。

大湯で昼食を済ませ、西へと向かった。大館、能代を過ぎて男鹿半島へ。なまはげを見たいという誘惑をこらえて、男鹿半島を縦断し、入道崎に向かった。ここは場所はUFOの目撃談が多々あるのだ。


入道崎は観光地であり、大きな駐車場の周りには十軒ほどの飲食店と土産物店が並んでいる。その中の1つがみさき会館である。


店内では店主が2003年に撮影したUFOの映像を見ることができるようだ。


UFOラーメン、UFO丼という名物料理もあったが、残念ながらもうお店は閉まっていた。

別の話もある。大湯在住のAさんは、男鹿半島の海沿いの道を夜に運転していると、海上で戦闘機がぐるぐると謎の光を追って回っているのを見た。男鹿半島には航空自衛隊の加茂分屯基地がある。Aさんにはその基地で働いている知り合いがいたので聞いてみると、「Aさんはあの光が見えたんですか?そうなんです、ここには謎の飛行体がよく現れるのです」と語った。この光が見えない人もいるそうだ。それが見えたAさんは、選ばれし人ということなのだろうか。

入道崎の先端は芝生の広場となっていて、ベンチが置かれていて海をこれでもかと見れるようになっている。半島の先端なので、東、西、北に海が広がっている。東には先ほど通ってきた道が見えた。北には水島という今にも消えてしまいそうな岩礁が見える。あとは何も見えない。いちばん近い陸はナホトカあたりの極東ロシアだ。半島は半分島だから半島なのだ。ずいぶん北に来たものだと我が身を案じる。

撮影を始めた。日が落ちてくると灯台が回り始めた。はるか彼方まで照らす必要があるのだろう、強い光が周期的にぐるぐると回転する。これは撮影にならない。


入道崎の少し西へ移動した。海沿いの空地に車を止める。入道崎ほど見晴らしはよくないが、北が開けている。先ほど三脚につけたままにしてあったカメラを取り出し、撮影を始めた。組み立てたままにしてあった三脚夕日が落ちたばかりでまだ明るい空に何か体が横切った。ちょうど北斗七星の真下である。


飛行機のシルエットはない。光の点滅はない。2つの光が並行している。人工衛星であれば赤い光ではなく白や青っぽいし、航路のあとは見えない。一体、これは何なのだ。見たことがない光である。


日が落ちてすぐに暗くなった。入道崎の方向にとても明るい光が出た。またいつもの国際宇宙ステーションだろう。


20 F4.0 ISO 1600 / SONY ILCE-7M4 + DT 24-105mm F2.8 SAM 2023/09/17/20:30:14

3つの光が出ている。


20 F4.0 ISO 1600 / SONY ILCE-7M4 + DT 24-105mm F2.8 SAM 2023/09/17/20:33:14

こちらは2つの光。


20 F4.0 ISO 1600 / SONY ILCE-7M4 + DT 24-105mm F2.8 SAM 2023/09/17/20:43:02

こちらも中央と右に細いが3つの光が出ている。


30 F4.1 ISO 1600 / SONY ILCE-7M4 + DT 16-35mm F2.8 SAM 2023/09/17/21:03:19

この一連の写真はそれぞれ違った時間帯に撮ったので別の光である。現れる光が交差ばかりしている。こんなに見事に交差するものなのだろうか。何か意図的な動きを感じざるを得ない。方角はすべて北西の入道崎の方である。

Aさんが見たような光は出ないかと待ったが、なかなか出なかった。しかし、赤い光を撮れたのは大きな収穫である。

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衛星情報の結果


情報なし。


国際宇宙ステーションであった。


人工衛星であった。


情報なし。


国際宇宙ステーションであった。


2つの衛星情報はあるが3つはない。


2つとも情報はない。


2つとも情報はない。


1つそれっぽいのがあるが、もう1つはない。

 
 

日下慶太

日下慶太

KEITA KUSAKA
コピーライター・写真家・コンタクティ・シーシャ屋スタッフ
1976年大阪生まれ大阪在住。自分がどこに向かっているかわかりません。著作に自伝的エッセイ『迷子のコピーライター』(イーストプレス)、写真集『隙ある風景』(私家版 )。連載 Meet Regional『隙ある風景』山陰中央新報『羅針盤』Tabistory『つれないつり』。佐治敬三賞、グッドデザイン賞、TCC最高新人賞、KYOTOGRAPHIE DELTA award ほか受賞。